2010年03月07日《第60回名曲コンサートに寄せて》

 名曲の定義といったら大げさですが、音楽の大切な要素は「もう一回聞きたくなる」ことでしょう。でも人間というのは贅沢なもので、いくら美しいものでも、あまり続けて聞かされると「ちょっとは変化をつけてよ!」という気分になります。カレーライスが3回続けて食卓に並んだときの気分です。
 このような音楽の「くりかえし」と「変化」を巧みに組み合わせた音楽が「フーガ」です。フーガはJ.S.バッハなどが活躍したバロック期に出来上がった、対位法を駆使した音楽の形式です。当時の音楽の主役はパイプオルガンでした。そしてオルガン奏者がもっとも力量を発揮する、はっきり言ってカッコよかったのが即興演奏でした。即興演奏では多くの場合、まず聴衆がよく知っている主題が演奏されます。そしてその主題に基づき、いくつかの変奏がなされ、その最後にフーガ、つまりその主題に対する返答のメロディーを入れたり、あるいは主題を転調したり、はたまた主題を反対から演奏したり、2倍に伸ばしたり、複雑なモザイクのような、それこそ人間技とは思えないような音楽を即興的に作り上げ、荘厳なフィナーレとなります。バッハの演奏は神と並び称されるほどの賞賛を得たと伝えられます。その成功があまりにもドラマチックだったので、その後の作曲家にとって、この「~の主題による変奏曲とフーガ」は一種、伝家の宝刀のような音楽形式になりました。
 マックス・レーガー(1873-1916)作曲の『モーツァルトの主題による変奏曲とフーガ』は、モーツァルトのピアノソナタ第11番イ長調K.331の第一楽章の主題を使って、変奏とフーガがなされます。レーガーはオルガニストとしても著名でした。1915年2月、第一次世界大戦に突入していたベルリンで初演されています。
 ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)は、バッハ以降、最大のフーガの作曲家です。しかしベートーヴェンの時代、古くさい、時代遅れの音楽の代表が、このフーガでした。しかしベートーヴェンの最晩年、入魂の弦楽四重奏『大フーガ』を作曲したことは知られています。ピアノ協奏曲第2番はベートーヴェン25才の時に作曲されていますが、すでに15才の頃には構想を開始していた、実質的な最初のピアノ協奏曲です。
 ベンジャミン・ブリテン(1913-1976)作曲の『青少年のための管弦楽入門』はその題名の通り、子供にオーケストラのそれぞれの楽器を聞いてもらう、知ってもらうことが目的で作曲されました。これに格好の形式が「変奏曲とフーガ」という訳です。ブリテンはイギリスのバッハともいえる、ヘンリー・パーセルの主題を使ってこの作品を書き上げました。

 佐々木 修