■バーバー:弦楽のためのアダージョ
1931年に完成させた最初の管弦楽曲「演奏会用序曲《悪口学校》」などで作曲家として高い評価を得たサミュエル・バーバー(1910〜1981)は、1935年ピュリッツァー奨学金とアメリカ・ローマ大賞を獲得してイタリアに留学した。その際に作曲されたのが「交響曲第1番」と「弦楽四重奏曲」。そして後者の第2楽章を弦楽に編曲したものが「弦楽のためのアダージョ」である。
この作品が知られるようになったのは、1938年トスカニーニ指揮NBC交響楽団がニューヨークで初演したのがきっかけ。以来世界的に親しまれ、「プラトーン」や「エレファントマン」等多くの映画やテレビドラマなどに使用されている。
ほぼ同世代のカーターやコープランドなどが実験的試みやモダニズムに傾倒したのに対し、バーバーは和声法や作曲技法において、おおよそ伝統に根差した姿勢を貫いて新ロマン主義音楽を標榜した。とりわけ旋律線の美しさは出色で、「バーバーのアダージョ」と呼ばれるこの作品も、清冽な叙情と玲瓏な情熱が全篇に湛えられている。原曲である「弦楽四重奏曲」ともに、アルト歌手で叔母でもあるルイーズ・ホーマーと、作曲家であるその夫シドニーに捧げられた。
モルト・アダージョ、2/4拍子。
(C)真嶋 雄大 (音楽評論家)
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