■メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲ホ短調 作品64
Birtoldy Felix Menndelssohn: Concerto for Violin and Orchestra in E minor,Op.64
初演:1845年3月13日、ゲヴァントハウス、フェルデナント・ダヴィットの独奏
演奏時間:12',8',6',(26')
楽器編成:2Fl,2Ob,2Cl,2Fg,2Hr,2Tp,Tim,Str

1小節半の前奏をおいて始まる、あの少し愁いを帯びた美しい旋律は、一度耳にすれば忘れることができないほど印象的なもので、その上品なたたずまいやむせ返るようなロマンティシズムともあいまって、この協奏曲は初演以来今日にいたるまで微塵も衰えることの無い人気を保ちつづけてきた。ロマン派の他の作曲家たちの音楽に比べると、流麗だが切迫した緊張感に乏しいと思われがちなためか、わが国ではいささか不人気をかこってきたメンデルスゾーンだが、この作品だけは、数あるヴァイオリン協奏曲の中でも最高の評価と人気を誇る名曲として傑作の名をほしいままにしてきた。 この曲はメンデルスゾーンが常任指揮者を務めていたライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のコンサートマスターであったフェルディナント・ダーヴィトの演奏を念頭に1883年に着想された。当初必ずしも彼の思惑通りに筆は進まず、その完成には何と6年もの年月を要したが、ダーヴィトから演奏法上の丁寧な助言を得て、1844年にはロマン派の協奏曲の中でも屈指の素晴らしい作品として完成されることになった。当時の作品としては珍しく3つの楽章が休み無く続けて演奏されるが、各楽章は簡にして要を得た見事なまとまりを見せ、まさにロマン派きっての古典主義者として、その均整の取れた書法を称えられたメンデルスゾーンの面目が躍如とする傑作である。またヴァイオリン独奏部も、彼特有のメランコリーの漂う叙情的な旋律美にあふれ、技巧的な見せ場も十分で、現在も多くのヴァイオリニストに欠かせないレパートリーとなっている。
(無断転載を禁ずる)(C)音楽評論家 中村孝義

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