■大阪シンフォニカー交響楽団-楽曲解説DB
モーツァルト:協奏交響曲変ホ長調K.364(320d)
Wolfgag Amadeus Mozart:Sinfonia concertante in E flat major, K.364(320d)
演奏時間:13',11',6',(30')
楽器編成:2Ob,2Hr,Str

■モーツァルト  協奏交響曲変ホ長調K.364(320d)
モーツァルト(1756〜1791)がその一生で旅していた日数を数えると、何と三日に一日は旅をしていた勘定になる。まさに旅漬けの一生であったといえるが、だからこそモーツァルトはモーツァルトになり得たのだともいえる。彼は一度耳にしたものをすぐさま諳んじることができたが、さらに特別であったのは、それを巧みに消化し、いつしか自分の世界と解け合わせてしまう稀有の才能を持っていた。彼の体内に入った音楽は、再び彼から流れ出る時、その姿を一変させ、人の心に深く浸透しないでは措かない特別の音楽へと変容したのである。
  実は今日演奏される協奏交響曲もその典型的な一例である。このジャンルは、彼が1777年から79年にかけてマンハイム、パリへと大旅行した際に、彼の地で大流行していたもので、彼も大きな関心をそそられ、パリで1曲(紛失)、帰郷後半年を経 た1779年の夏に2曲の作品に着手している。結局完成したのは1曲のみで、現在彼の真正の協奏交響曲としてはこの1曲が知られるのみである。
当時マンハイムやパリで作られていたものと聴き比べれば直ちに分かるが、スタイルの点ではそれらからの様々な影響が感じられるものの、音楽としての質には格段の差があり、モーツァルトと言う作曲家の段違いの凄さを感じさせないわけには行かない。この作品では彼がこれまでの協奏曲などで取ってきた華美で軽めのギャラントな書法は影を潜め、心に深く刻まれる内実の深さが顕著となっている。とりわけソナタ 形式による深い響きと恰幅の大きな表現を持った第1楽章、モーツァルトならではの哀しさを湛えた第2楽章、それらを一層引き立たせるかのように軽快に振舞われる終楽章など、いずれも耳にして胸を締め付けられない人はいないだろう。やや暗めの音色を持ったヴィオラを明るく響かせるため、ヴィオラのパートを半音高く二長調で書いているのも興味深い。本日の二人のソリスト山田晃子と今井信子が、児玉宏にどう対峙してその深さを引き出すか楽しみだ。
(無断転載を禁ずる)(C)中村孝義(大阪音楽大学学長・音楽学)

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