■大阪シンフォニカー交響楽団-楽曲解説DB
リヒャルト・シュトラウス:交響詩「マクベス」
Richard Strauss: Macbeth Trv163, Op.23
演奏時間:18'
楽器編成:3Fl(1.2.3/Pic),2Ob,EH,2Cl,Bs-Cl,2Fg,K-Fg/4Hr,3Tp,Bs-Tp,3Tb,Tub/Tim,2Pec(Cym,BD,TT,SD)/Str

 リヒャルト・シュトラウス(1864〜1949)は、《サロメ》《エレクトラ》《ばらの騎士》《ナクソス島のアリアドネ》をはじめとするオペラの作曲家として活躍したが、それに先立つ19世紀末の時期に、「音の詩(Tondichtung)」と称する7つの管弦楽作品を発表した。これはリストの創始した「交響詩(Symphonische Dichtung)」に連なる標題音楽のジャンルであり、両者の違いについて美学的な論議があるものの、邦語題名としては一括して「交響詩」という名称が用いられている。本日演奏される《マクベス》は、それらのうち最初に着手された曲で、1886年、作曲者22歳のときにスケッチが開始され、88年にいったん完成したが、曲の終わりに、マクベスを打ち倒したマクダフの勝利の音楽を置いたことについて、マイニンゲンにおける上司であったハンス・フォン・ビューローから賛意が得られなかったため、しばらく放置することになった。やがて改訂が行われ、1890年10月13日、ヴァイマルにおいて作曲者の指揮で初演された。しかしシュトラウスは自身のオーケストレーションに満足できず、再び改訂を行い、その形での最初の演奏が1892年2月29日にベルリン・フィルによって、やはり作曲者の指揮により行われた。その間に2作目の交響詩《ドン・ファン》、3作目の《死と変容》も初演されているから、《マクベス》は最初の曲としては、ことのほか困難な歩みをたどったといえよう。副題に示されているように「シェイクスピアのドラマによる」作品であり、第6小節に (Macbeth) と記入され、第64小節には (Lady Macbeth) との表記に続いて、シェイクスピアの作品の第1幕第5場でマクベス夫人が帰館する夫への思いを語る「早く、ここへ帰っていらっしゃい、わたしの魔力をあなたの耳の中へ注ぎこんであげるから[後略]」(三神勲訳)というせりふが引用されている。マクベスの主題は付点のリズムを伴って、ニ音からオクターブ半上のイ音まで跳び上がり、7度下降して変ロ音に達してから急速な上昇運動に移る形、マクベス夫人のそれはイ音のトレモロに乗って木管が高音域でいわば蛇のようにくねくねと動く形。曲は二人の人物の性格像をこうした音楽的主題として形成し、その上で、自由なソナタ楽章として組み立てられている。また、展開部には曲冒頭の闘いのモティーフが金管の最強音で2回奏され、それぞれの後にフェルマータの付いた総休止が置かれている個所があるが、そこは第3幕第4場で、マクベスに殺されたバンクォーの亡霊が2回現れる個所と対応しているとも考えられよう。
(無断転載を禁ずる)(C))根岸一美(大阪大学文学研究科教授)

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