■ラフマニノフ:交響曲第3番イ短調op.44
Sergey Rakhamaninov: Symphony No.3 in A minor,Op.44
演奏時間:13',12',14',(39')
楽器編成:2Fl,Pic,2Ob,EH,2Cl,B-Cl,2Fg,K-Fg,
4Hr,2Tp,alto-Tp,3Tb,Tub,
Tim,5perc(BD,Cym,SD,Trgl,TT,Xyl),
Hp,Cel,Str
セルゲイ・ラフマニノフ(1873-1943)はロシアの19世紀末から20世紀初頭を代表する作曲家で、モスクワ音楽院をライバルのスクリャヴィンと同期の1892年に卒業しました。ラフマニノフの方が優等生だったのですが、第1交響曲(1895)が不評で立場は逆転します。しかしピアノ協奏曲第2番(1901)の成功で自信を取り戻して創作活動を再開し、チェロ・ソナタのような宝玉の室内楽や前奏曲などの親しめるピアノ小品を書きました。しかしソヴィエト革命後は実質的にアメリカへ亡命して、ピアニストとして活躍します。 ロシアを離れてもラフマニノフは祖国への望郷の念を捨てきれず、後期ロマン派スタイルのノスタルジーの中に生きていましたが、 実際には演奏旅行が多忙すぎて作曲する心の余裕はなかったようです。しかし50歳代になって創作への意欲を取り戻し、スイスの別 荘で1935年から36年夏にかけてこの第3交響曲を作曲しました。初演はストコフスキーの指揮で1936年11月6日にフィラデルフィアで行われました。曲想は亡命以前のロシアの風物にあって、同時代のロシアの作家チェーホフが描いた倦怠感の中に哀愁を含んだ世 界であり、シャリアピンが歌った昔のロシアの姿でした。西欧の音楽語法をよく消化したチャイコフスキーを継承して、革命前の古き良 き時代のロシアの広大な風土に対する憧憬を表現した3面の大きな音響のトリプティークともいえるでしょう。 第1楽章(レント―アレグロ・モデラート)は静かに始まる序奏付のソナタ形式で、オーボエの第1主題、チェロの第2主題ともにロシアらしいメロディです。展開部では多彩な音の風景画が絵巻物のように続きます。第2楽章(アダージョ・マ・ノン・トロッポ)は自由な3 部形式の緩徐楽章ですが、中間部(アレグロ・ヴィヴァーチェ)が活発なスケルツォの性格を持っていて、全体の構造のバランスをとるような仕組みになっています。再現部は短いアダージョです。第3楽章(アレグロ)は単一主題のソナタ形式とでもいうべき独特のスタイルになっていて、フーガのように対位法的に展開するところが印象的です。
(無断転載を禁ずる)(C)音楽評論家 鴫原 眞一