■シューマン:ピアノ協奏曲 イ短調 Op.54
シューマンは1845年1月に入ってからクララに対位法を教え始めるなどドレスデンで次第に精神的な落ち着きを取り戻していく。そしてシューマンは1841年にライプツィヒで書いた「ピアノと管弦楽のための幻想曲イ短調」に5月から7月にかけて「ピアノと管弦楽のためのロンド」と「インテルメッツォ」を書き加えて「ピアノ協奏曲イ短調」を完成した。曲は1846年1月1日ライプツィヒ・ゲヴァントハウスでクララによって初演された。
第1楽章 イ短調 4/4拍子 ソナタ形式 冒頭の第1主題はその中の下降音型がクララのモットー(反復楽句)としてこの楽章を様々な色合いで特徴づける。この第2主題はハ長調に転じて奏され、二つの主題で展開される。最後のシューマン自身によるピアノ・カデンツはまさにクララとの愛の記念碑。
第2楽章 インテルメッツォ ヘ長調 2/4拍子 三部形式 主部の主題はクララのモットーの余韻を漂わせ、ゆっくりと優雅に秘めやかな愛の囁き、中間部はチェロの旋律に乗ってピアノが奏でる深い思いを弦と木管が引き継ぐ。再び主部に戻り、クララのモットーの反復とともに終楽章に入る。
第3楽章 イ長調 3/4拍子 ソナタ形式 終楽章は生き生きと明るい希望に満ちた主題で始まる。軽い足取りで奏される第2主題はシンコペーションや複リズムの試みに興じるシューマンの姿が目に浮かぶ。喜々とした独奏ピアノの展開はオーケストラの全奏とともに高まり力強く全曲を結ぶ。
(無断転載を禁ずる)(C) 中原 昭哉(音楽評論家)