■大阪シンフォニカー交響楽団-楽曲解説DB
シューマン:交響曲第3番変ホ長調Op.97「ライン」
Robert Schumann: Symphony No.3 in Eb major, Op.97"Rheinische"
演奏時間:9'7',4',6',6',(32')
楽器編成:2Fl,2Ob,2Cl,2Fg,4Hr,2Tp,3Tb,Tim,Str

■シューマン:交響曲 第3番変ホ長調 Op.97『ライン』(マーラー編曲版)
 デュッセルドルフで指揮者となったシューマンは、この地域の風物や人々の暮らしぶりに触発されて5楽章の交響曲『ライン』を書いている(1850)。第1番『春』と並んでシューマンの明るい面が前面に出た作品である。マーラーは彼の交響曲4曲すべてを演奏しているが、『ライン』を取り上げたのは晩年のニューヨーク時代だった(1911)。
 シューマンの交響曲はその充実した音楽内容に比してオーケストレーションが貧弱だと評されることがある。彼を高く評価していたマーラーもこの点では同意見であった。いかにこれを「改善」して演奏するかがマーラーの関心事となる。現代では「古楽」派ならずとも原作に忠実であろうとするのが主流だが、100年前はそうではなかった。何の疑いもなく「より良くしよう」と信念を持って取り組んでいるのが興味深い。
 マーラーの編曲はレーガーがモーツァルトの旋律で別の変奏曲を仕立てたような「建て替え」ではなく、原曲の外形はそのままに、旋律やコントラストを強調して曲の輪郭をより明瞭にする「リフォーム」である。とはいえ全1168小節のうち400小節以上に手を加える入念さだ。現代のオーケストラでも箇所ごとに弦の人数を減らしたり、管を補強したりするのは珍しいことではなく、その範疇の改編も多いが、パートを左右に分けてステレオ効果を狙ったり、伴奏の弦をピツィカートに変えたり、フレージングや強弱にも仔細な指定をしていて、いかにも凝り性のマーラーらしい。
 大胆な楽器変更もある。シューマンの原曲はトゥッティ(総奏)が多く単調だという批判も少なくない。メリハリを付けるにあたってマーラーは無闇に補強や増員はせず、逆に随所で減員を行って強弱の差を広げている。トランペットとティンパニの出番は極端に減るが、いざ登場となれば一層華々しい。楽器を入れ替えて旋律を明瞭にするところなど、オーケストラを知り尽くしたマーラーならではのわざと言えよう。

第1楽章 「いきいきと」ソナタ形式。基調の3/4拍子と、小節線を跨いだ3/2拍子とが自在に交錯し躍動する。途中金管で始まる主題の後半(62小節、開始後約1分)は、原曲ではヴァイオリン・フルート・ホルンvsオーボエ・クラリネットの掛合いだが、マーラーは弦・木管vsホルンに置換えて対比を鮮明にしている。また再現部前の静寂では(367小節、同約6分)、2度響くホルンの1回目をゲシュトップフ(管を手で塞ぐ奏法)にして変化を付けている。

第2楽章 「とても穏やかに」スケルツォ、3/4。ライン川地方の舞曲に楽想を得たものであろうか、これも「おとぎ話」の文脈上にある。そう言えばマーラーも自分の交響曲でレントラーという地方の舞曲を使っている。冒頭主題の2度目をffにしたのはマーラーである。

第3楽章 「速くなく」4/4。牧歌的で、ヴァイオリンの旋律が美しい。マーラーもフレーズの明瞭化程度であまり手を加えていない。

第4楽章 「荘重に」4/4。シューマンは、ケルン大司教の枢機卿就任式に感銘を受けてこの楽章を書いた。宗教曲を思わせる重厚な音楽である。ここもマーラーの書き込みは少ない。

第5楽章 「いきいきと」4/4。シンコペーションがアクセントとなっている快活な楽章。原曲の冒頭主題は2回ともトゥッティだが、マーラーはまず弦のみ、2度目に木管を加えている。一層スピードを増した終曲部では、金管群を増強してフィナーレを華麗に演出している。

(C)三 ヶ 尻  正(みかじり ただし・音楽学)
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