■大阪シンフォニカー交響楽団-楽曲解説DB
ショスタコーヴィチ:交響曲第5番ニ短調作品47
Dmitry Shostakovich: Symphony No.5 in D minor Op.47
演奏時間:15',5',14',10',(44')
楽器編成:2Fl,1Pic,2Ob,2Cl,1Es-Cl,2Fg,1K-Fg,
4Hr,3Tp,3Tb,Tub,
Tim,4perc(Xyl,Glock,Trgl,SD,Cym,TT,BD),
2Hp(one part),Pf/Cel,Str,
ショスタコーヴィチ:交響曲第5番 ニ短調 op.47
ショスタコーヴィチが体制の批判に晒されたのはかなり早い時期からでした。ペテルブルク生まれで、西欧の前衛音楽にも強い関心を持っていましたので、若い作曲家として20世紀前半の前衛的な芸術運動の一環に自らも加担していました。オペラ「ムツェンスク郡のマクベス夫人」(1934)はレスコフの小説が原作の不倫と殺人を扱った扇情的な内容ですが、1936年1月28日付けの党の機関紙「プラウダ」で「荒唐無稽」と批判されて、以後上演は不可能になります。ショスタコーヴィチは1936年の革命記念日のために書いた斬新な交響曲第4番の初演をゲネプロまですませながら急遽中止して、党の路線に沿った交響曲を新たに書くことにしました。こうして第5番は1937年4月18日着手、7月20日完成、初演は11月21日、10月革命20周年を記念して、ムラヴィンスキー指揮のレニングラード・フィルによって行われました。「革命」というエピセットが付く由縁です。
第1楽章(モデラート―アレグロ・ノン・トロッポ)はソナタ形式。3つの主題を持ち、対位法的に展開されてクライマックスに達し、対称的なアーチ形になって再現部から最初の主題に戻ります。
第2楽章(アレグレット)はスケルツォ、複合3部形式で、まず低弦が主題を奏します。トリオは対照的に軽快なレントラーふうのメロディーです。
第3楽章(ラルゴ)は弦楽合奏で始まる美しい叙情的なテクスチャーで、粛清で犠牲になった友人たちへの鎮魂曲です。3日で書き上げたということですが、作曲者の感情移入が感じられます。
第4楽章(アレグロ・ノン・トロッポ)はソナタ形式ですが、冒頭でトロンボーンが上行する4音の勇壮なモチーフADEFをマラカートで演奏します。この音形は再現部ではADEF♯に変形して現れますが、これはビゼーのオペラ「カルメン」のアリア「ハバネラ」からの引用で、その歌詞「信じるな」には作曲者のメッセージが隠されているという説(亀山郁夫「悲劇のロシア」)には説得力があります。
(C) (無断転載を禁ずる)音楽評論家 鴫原 眞一
同じ5番であるため、よくベートーヴェンの「運命」と対比される。また比べられても遜色のない構成観と劇的な表現力を持っている。ショスタコーヴィチの150近い作品のうち、世界中でもっとも多く演奏される曲目の一つで、作品中の最高峰の一つとされる。1937年11月21日、ムラヴィンスキー指揮のレニングラード・フィルハーモニー交響楽団によって初演され、好評を得た。
こう書くと結構ずくめだが、ソビエト革命20周年のこの時期、ショスタコーヴィチは人生最大の危機に直面していた。有力な庇護者だったトゥハチェフスキー元帥が、この年5月、反逆罪で逮捕され、銃殺された。スターリンの粛清の嵐が吹き荒れ、ショスタコーヴィチ自身も取り調べられた。罪に問われなかったのは奇跡だといわれる。
第5番はわずか3ヵ月で完成した。重苦しい雰囲気のなかで、異常なまでに精神を集中した。それが第1楽章の重々しく物語るような主題から雄大な行進曲への展開、第2楽章の巧みなスケルツォ、第3楽章の美しいラルゴ、第4楽章のリズムの大饗宴というあざやかな描き分けと、それを上回る統一感を生む原動力となった。人々は「社会主義リアリズムの成功」ともてはやしたが、自身は「芸術の政治への勝利」と感じたのではなかろうか。
(無断転載を禁ずる)(C) 雑喉 潤(音楽ジャーナリスト)