■大阪シンフォニカー交響楽団-楽曲解説DB
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番変ロ短調op.23
Pyotr I'lyich Tschaikovsky: Concerto for piano no.1 in b-flat minor op.23
演奏時間:17',8',7',(32')
楽器編成:2Fl,2Ob,2Cl,2Fg,4Hr,2Tp,3Tb,Tim,Str
ロマン主義の底流として、またロマン主義を特徴づけた重要なひとつの要素として、民族主義がある。その最も端的な顕れとしては、その作曲家の自国の民族音楽を芸術作品の中に取り入れるということであった。生前、同じ国の作曲家たちから“西欧かぶれ”との非難を受けたチャイコフスキーも、時を経た今日では、極めてロシア的な音楽を作曲した音楽家であるとされている。確かにチャイコフスキーは他の著名なロシアの作曲家、例えばグリンカやムソルグスキーのようなやり方で民族音楽を自分の作品に取り入れず、むしろ民族音楽と一定の距離を保っていたと言えるのだが、その音楽の根底に流れているものは、やはりロシアの風土を背景にしか考えられないセンティメンタリズムだろう。
そのチャイコフスキー(1840〜1893)は全部で3曲のピアノ協奏曲を作曲しているが、今日一般にチャイコフスキーのピアノ協奏曲と言えば、余程の事情でもない限りこの第1番を指すように、他の2曲はほとんど演奏される機会がない。第2番はピアノとオーケストラの対比がやや不明瞭であること、また第3番は第1楽章のみが完成されただけで、他の楽章はスケッチしか残っていないことがその理由のひとつだろう。とにかくこの第1番は1874年に作曲されたのだが、オーケストレーションの巧妙さ、独奏ピアノの華やかな扱い、そして耳になじみやすい美しいロシア的な旋律など、群を抜いた魅力を持っているために、最もポピュラーなピアノ協奏曲のひとつとして、多くの人々に喜んで聴かれ、また多くのピアニストによって好んで演奏されている。
とは言え、この協奏曲が最初から素直に受け入れられた訳ではないという話は有名である。つまり大ピアニストのニコライ・ルビンシテインに捧げるはずだったこの曲を、ルビンシテインが酷評し改作を勧めたために、チャイコフスキーはこの献呈を取りやめたのである。結局、曲は指揮者でありピアニストでもあったハンス・フォン・ビュローに捧げられ、1875年のボストンにおける初演で大好評を博してチャイコフスキーの名を世界的なものにしたのである。のちにルビンシテインはチャイコフスキーと和解し、度々この曲を演奏したという。
第1楽章 アレグロ・ノン・トロッポ・エ・モルト・マエストーソ、変ロ長調、3/4拍子〜アレグロ・コン・スピーリト、変ロ短調、4/4拍子、かなり自由な変則的ソナタ形式。
第2楽章 アンダンティーノ・センプリーチェ、変ニ長調、6/8拍子、中間部がプレスティシモになる3部形式。
第3楽章 アレグロ・コン・フォーコ、変ロ短調、ロンド形式。
(無断転載を禁ずる)(C))福本 健