■大阪シンフォニカー交響楽団-楽曲解説DB
エルガー:創作主題による変奏曲「謎(エニグマ)」Op.36
Elgar: Variations on an Original Theme, Op.36 "Enigma"
演奏時間:29'
楽器編成:2Fl(1Pic),2Ob,2Cl,2Fg,K-Fg,4Hr,3Tp.3Tb,Tub,Tim,3Perc(SD,Trgl,Cym,BD),opt-Org,Str
「ヴォルガの舟唄」を思わせる短い主題で始まる。変奏が14つづく。しかし短い主題は本当の主題でなく、本当の主題は、演奏のなかに決して姿を現さない。これはエルガー自身が語っていることで、この通りだとすると、14の変奏は、見えない主題に対する変奏なので、変奏相互のつながりや、発展様式をつかむことができない。かといって組曲でもない。総譜の最初のページに「Eniguma」と印刷されてあったので、まもなく「エニグマ変奏曲」と呼ばれるようになり、エルガー自身もその呼び方を許容した。
 謎はもう一つある。それぞれの変奏に名前のイニシャルや符号がつけられており、それはエルガーと親しい人々を表し、その人々に一曲ずつ捧げられたものであることがわかる。「かならずしも音楽家ばかりでなく、彼らを面白がらせ、自分をも面白がらせるためスケッチした」と、これもエルガー自身がいっている。
 14人はいったいだれなのか。これが第2の謎だったが、推理小説好きの多い英国人によって、これまでにほぼ説き明かされてしまった。とくに第1変奏は、9歳年上にもかかわらず、生涯よき妻だったエルガー夫人に捧げられている。こういうところに愛妻家エルガーの人間味がにじみ出ている。フィナーレの第14変奏の E・D・U は、夫人がつけたエルガーの愛称エドゥーで、作曲家の自画像だといわれる。第13変奏にはイニシャルではなく、☆☆☆だけがついているが、メンデルスゾーンの序曲「静かな海と楽しい航海」が断片的に引用されているので、作曲当時、航海していた女性の一路平安を祈ったものとされている。
 謎が解明されてしまったいま、この曲の管弦楽としての面白さ自体が再認識され、欧米では演奏機会が多い。初演は1899年。日本では終戦直後、1946年4月にローゼンシュトック指揮のNHK交響楽団によって初演された。行進曲「威風堂々」だけでなく、エルガーはもっと知られてよい作曲家である。
(無断転載を禁ずる)(c)雑喉 潤

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