■大阪シンフォニカー交響楽団-楽曲解説DB
エルガー:セレナードホ短調作品20
Elgar/Edward: Serenade in E minor, Op.20
演奏時間:3',6',3'(12')
楽器編成:Str.
音楽という芸術の内容や形式に革命を起こしたり、後世の規範となるスタンダードを打ち立てる創作は、英国文化の得意とするところではない。だが、18世紀早々に中産階級や都市住民が誕生していたこの島国は、音楽の受容と消費に限れば、常に最先端文化国家だった。国内は平和を謳歌し、アマチュア合唱や学校や地域のオーケストラも盛んだった大英帝国絶頂期に生まれたエルガー(1857-1934)の音楽の背景は、どこか20世紀末から現在の日本に似ていると思えなくもない。
イングランドのウスターで生まれ、独学で始めた作曲での成功もままならなかったエルガーだが、32歳で妻アリスを娶ったことで機運が変わったか、やっと成功への道を歩み始めた。夫人への結婚3年目のプレゼントとして書かれたこの小さな弦楽セレナードは、最初の成功作のひとつ。オリジナルは結婚前に地元アマチュア合奏団のために書いた小品集とされる。蛇足ながら、エルガーの最も有名な初期小品《愛の挨拶》もアリスに書いたことを考えると、音楽史上に名高い姉さん女房の存在の大きさにあらためて驚かされる。
イギリス娯楽サロン音楽特有の親しみやすさの裏に顔を見せる、深い陰影が魅力だ。第1楽章、アレグロ・ピアチェヴォーレ。ヴィオラの特徴的なリズムがもの悲しい旋律を導く。第2楽章、息の長いハ長調のラルゲットは、《エニグマ変奏曲》の「ニムロッド」で極まる叙情性の先駆けとされることも。第3楽章、ゆったりした田園舞踏風のト長調アレグレット。最後に冒頭がホ長調で回帰し、曲は閉じられる。
(無断転載を禁ずる)(C)渡辺 和(わたなべやわら/音楽ジャーナリスト)