■大阪シンフォニカー交響楽団-楽曲解説DB
エルガー:交響曲第1番変イ長調Op.55
Elgar: Symphony No.1 in A flat major,Op.5
演奏時間:19',7',12',12',(50')
楽器編成:3Fl(2Fl,3rd/Pic),2Ob,EH,2Cl,B-Cl,2Fg,K-Fg,4Hr,3Tp,3Tb,Tub,Tim,3perc(SD,Cym,BD),2Hp,Str
ロンドンの夏の一大クラシック・イヴェント「プロムスPROMS」の最終日恒例の一曲<威風堂々>や、愛らしい名曲<愛の挨拶>の作曲者として広く知られるエルガーは、オーケストラの分野でイギリス音楽の素晴らしさを国際的に認知させた最初の作曲家と評されている。独学で音楽を学んだ彼は、42歳の時に発表したオーケストラ曲<エニグマ変奏曲>で一躍名声を得、その後は国内の要職を歴任するほか、47歳の時にはナイトに叙せられるという名誉をも得た。そのエルガーが50歳の時に満を持して取り組んだ最初の交響曲が、この<交響曲第1番>である。エルガーは完成されたものとしては2曲の交響曲を残したが、それらはいずれもエドワード王朝の叙事詩としての性格を強く帯びていると言われる。音楽のパトロンでもあったエドワード7世が<威風堂々>の中の旋律を気に入り、のちに<戴冠式頌歌>の終曲"The Land of Hope and Glory(希望と栄光の国)"に転用されて、「第2の国歌」とも呼ばれるほどになったエピソードは名高いが、2曲の交響曲にはその国王への思いが、威厳と気品に満ちた音楽の中に深く込められている。
1908年12月にハンス・リヒター指揮のハレ管弦楽団によってマンチェスターで初演されたこの交響曲は、大変な熱狂をもって迎えられた。イギリスの聴衆の歓迎ぶりは、その後1年余りのあいだに100回以上もの再演が行われたという事実からもうかがえよう。曲は、第1楽章導入部の主題が全曲を統一するモットー主題として何度も現れる手法により、大規模な4楽章構成の交響曲に仕上げられている。
第1楽章は、アンダンテ・ノビルメンテ・エ・センプリーチェ(高貴かつ素朴に)と指示された導入部に始まる長大な楽章。モットー主題がたっぷりと歌われたのち、リズミックで熱情的なアレグロの第1主題が現れ、やがて美しい第2主題も登場して、様々な要素をちりばめた多彩なオーケストレーションが繰り広げられていく。
第2楽章アレグロ・モルトはスケルツォ楽章で、細かい音の動きと闊歩するような動きが交錯する主部に、エルガーが「川辺に降りたときに聞こえる何か」と言い表した独特の情感の中間部が挿まれる。
第3楽章アダージョは、ハンス・リヒターがベートーヴェンの偉大な緩徐楽章にも匹敵すると称えた、崇高さと優美さを兼ね備えた美しい楽章。
第4楽章は、レントの序奏でモットー主題の断片を扱いながら第1楽章が回想された後、主部アレグロの付点リズムを特徴とする主題が現れ、さらに穏やかな主題や行進曲風の楽想を交えながらクライマックスが築かれる。そしてコーダでは、モットー主題が神々しいまでの感動をもって再現される。
(無断転載を禁ずる)(c)柿沼 唯 (作曲家)