■大阪シンフォニカー交響楽団-楽曲解説DB
エルガー:ヴァイオリン協奏曲ロ短調Op.61
Elgar: Violin Concerto B minor,Op.61
演奏時間:(18',11',19'),48'
楽器編成:2Fl,2Ob,2Cl,2Fg,(pot-K-Fg),4Hr,2Tp,3Tb,(opt-Tub),Tim,Str
◆ウスターでピアノ調律師の息子に生まれたエルガー(1857-1934)、ほぼ独学で作曲を学び、イングランド中部の地方楽士となった。32歳で9歳も年上の女性に熱愛、結婚後、一念発起ロンドンへと上京するが、音楽家としての成功はならず、失意でUターン。夫を信じる妻の愛により才能が開花したか、この頃から19世紀英国で人気だったカンタータが評価され始め、1899年にはロンドンで初演された「エニグマ変奏曲」が大成功を収める。世紀転換直後の「威風堂々」は国民的大ヒットとなり、瞬く間の大出世を遂げ、1904年にはナイトに叙されるまでとなった。
世紀転換期頃には、エルガーの名声は海外にも轟く。ナイトとなった翌年、ヴィーンの若き名手クライスラーがヘアフォード・タイムズ記者に、「エルガーは現存する最大の作曲家」と賞賛、翌年に正式に協奏曲を委嘱する。早速スケッチを開始したエルガーは、何度も困難にぶつかりつつも、1909年には総譜を完成。翌年に作曲者の指揮、クライスラー独奏で初演された。が、その後のクライスラーはなぜかこの作品に興味を失い、期待された録音も遺していない。
暗いロ短調の渋さが支配するこの作品、ベートーヴェンとブラームスのヴァイオリン協奏曲に伍する重厚さと叙情性をエルガーなりに求め、さらには元ヴァイオリン弾きらしくハイテクニックをこれでもかと投入したために、レパートリーに定着した20世紀の協奏曲としては規模も技巧も空前の難曲となった。なお、総譜の最初にスペイン語で「ここに・・・・・の魂が封じられる」と、エルガー得意の謎かけがされている。5文字が誰を示すのか、今では定説があるが、かつては様々に議論された(作曲者の記述から正解が判明するまでは、エルガー夫人が仄めかした「ELGAR」説も支持されていた)。クライスラーの意見がどうあれ、エルガーとすれば「魂から綴った」と述べる程の愛着を抱いた作品であることは確かだ。
第1楽章、アレグロ、シンフォニックな協奏曲ソナタ形式。管弦楽がロ短調の重厚な第1主題を提示、続いてクラリネットが「アネモネ主題」と呼ばれ、曲のリリシズムを決定付ける優しい第2主題を導く。再び第1主題が出される途中から、テーマを閉じるように独奏ヴァイオリンがやっと加わる。展開部で独奏はアニマートで重音を連発。可憐な「アネモネ主題」が堂々と再現するのが印象的だ。
第2楽章、変ロ長調のアンダンテ。カンタービレの独奏ヴァイオリンが甘美に歌い続ける。リリカルだがセンチメンタルにならないのは、晩年のベートーヴェンのようだ。
巨大な第3楽章、アレグロ・モルト。独奏がせわしなく動く導入から、「威風堂々」風の主題、独奏と管弦楽が担う広々とした力強い主題、さらに繊細な主題と、次々と繰り出される。聴き所は、楽章の半ばに始まり、分割された弦、クラリネット、ファゴット、ホルン、ティンパニーが伴奏する、総譜数頁に及ぶ巨大な独奏用カデンツァ部分だろう(弾くべき音符は全て書かれ、即興部分はない)。弦がピチカート・トレモロの響きで呟く「アネモネ主題」に始まり、先行楽章の素材が哀しげに回想され、作品の構成としても頂点となっている。第1楽章第1主題の記憶でカデンツァが終わると、楽章冒頭のアレグロ・モルトが戻り、華々しさの中にも独奏が重音をたっぷり聴かせつつ、哀愁を残しながら閉じられる。
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