シェイクスピア生誕450年記念【ハムレット】
≪忘れられた北欧の作曲家たち≫
2014年5月30日(金)19時00分開演
メンデルスゾーンの伝記を読むと必ず目にする「ガーデ(ゲーゼ)」は、1817年コペンハーゲンに生まれたデンマークの作曲家。 交響曲8曲の他、オペラ・バレエ・協奏曲・歌曲・室内楽など、非常に多くの作品を書き残しました。
シェイクスピア生誕450年記念の為に選んだ作品は、デンマークの王室を舞台に繰り広げられる<復讐と悲恋のドラマ・ハムレット序曲>。 簡素な形式の中に、登場人物の性格が明確に刻まれた作品です。
1796年ストックホルムに生まれた「フランツ」は、1630年前後から家系記録が残る「大音楽家ベルワルト家」の末裔で、スウェーデンの作曲家。早くからヴァイオリンやヴィオラ奏者として活躍、1829年奨学金を得てベルリンへ移住しますが、作曲の傍ら、偶然なことから整形外科医療に携わり、新しい治療法や独自の治療器具の開発に関与します。
1841年、全ての施設を売り払ってウィーンへ移住。翌年、自らの指揮で自作自演の公開演奏を行い好評を得ますが、直後に方針転換。祖国ストックホルムへ帰国し、以後、作曲に専念します。勿論ウィーンでは一歳年下のフランツ(シューベルト)と実際に会話を交わすことはありませんでしたが、今回演奏する交響曲第3番からは、音楽的に共通するものが数多く聴き取れるように思います。
1865年生まれのニールセンはデンマークの作曲家で、ガーデ(ゲーゼ)の弟子。スヴェンセンの後任として、王立歌劇場指揮者としても活躍し、交響曲6曲・ヴァイオリン協奏曲・オペラなどの作品を残しています。 爆発するエネルギーと、途切れることのない哀愁のメロディーに満ちた交響曲第1番は、初めてでもすぐに親しみを持てる、聴き易い名曲です。
グローバルの名の下に音楽文化が「イベント化」し、「聴衆の数」が音楽作品の価値を決めるかのように取り扱われる昨今、今回取り上げた3人は、母国民族が歴史的に受け継ぐ独特の感性を継承し、広い視野の中から自らの価値観を掲示することにこだわった故に、将来も、必然的に忘れ去られる宿命を背負った作曲家たちかもしれません。
本日の演奏をお聴き下さった皆さまの中で、新しい発見が啓かれることを!
大阪交響楽団 音楽監督・首席指揮者
児玉 宏