2016~2018年度全6回シリーズ
≪ウィーン世紀末のルーツ~フックスとブラームスから始まる系譜②≫
2016年12月8日(木)19時00分開演
皆様アンデルセンの「人魚姫」はご存知ですよね?ディズニーの「リトル・マーメイド」の原作にもなりました。なんとこの有名な童話を、ツェムリンスキーという作曲家が映画音楽顔負けの絢爛豪華な交響詩にしてしまいました。マーラーの交響曲がお好きな方、リヒャルト・シュトラウスの交響詩がお好きな方、ワーグナーの楽劇がお好きな方、そして毛色は違いますがブラームスのお好きな方、間違いなくツェムリンスキーにもはまります!
そのツェムリンスキーを、当時9歳の神童作曲家・コルンゴルトに、作曲の先生として強く推薦したのが、宮廷歌劇場監督のマーラーです。その頃コルンゴルト少年は音楽院作曲科のローベルト・フックス教授に師事していました。「フックス大先生じゃなくてこっちの若いのにつきなさい」と言ったかどうかは勝手な想像ですが、フックスはマーラー自身の先生でありツェムリンスキーの先生でもあるのに、随分失礼かつ大胆なことをするものです。その甲斐あってかツェムリンスキーとコルンゴルトは意気投合。出世作「雪だるま」もツェムリンスキーが手伝います。
ユダヤ人であるために後にアメリカに亡命し、ハリウッドで映画音楽の最初の黄金期を作ったコルンゴルトの代表作「ヴァイオリン協奏曲」が、映画音楽っぽいと言われますが、そうではなくて、そういう音楽をハリウッドに持ち込んだのがコルンゴルト自身であり、その源がツェムリンスキーに代表されるウィーンの後期ロマン派の音楽であったわけです。どおりで「スター・ウォーズ」が後期ロマン派の末裔に聴こえるわけです。
世紀末転換期のウィーンロマン派交響楽三本立ての音の洪水を、どうぞ全身で浴びて下さい!
大阪交響楽団 常任指揮者
寺岡 清高