≪名曲セレクション2017“新世界より”≫
2017年6月3日(土)
昼の部13時30分開演/夜の部17時00分開演
メンデルスゾーンといえば私たちは先ずヴァイオリン協奏曲を思い出すし、確かにこの協奏曲はどこから見ても隙のない、いわば「不朽の名作」である。彼の交響曲は「スコットランド」とか「イタリア」とか、名前のついたものだけでなく、どれも緻密で均整のとれた古典交響曲のお手本のようである。このような数々の名作に並ぶ貴重な作品が劇音楽「真夏の夜の夢」で、シェイクスピアの戯曲によるこの作品の、劇音楽という枠を超えた豊かさは私たちを魅了する。序曲は冒頭に現れる繊細な音形が全曲を支配していることだけを考えても、「劇音楽」の概念をはるかに超えたものだが、その緻密さと繊細さが決して人を疲れさせることがないのは「天才」の所以だろうか。
マックス・ブルッフは「スコットランド幻想曲」というヴァイオリンとオーケストラのための魅力的な作品があるが、この「協奏曲」の完成度、そして奏者達を惹きつけてやまない魅力は圧倒的で、だから世界中で演奏されているし、ヴァイオリニスト達に必須のレパートリーとして国際コンクールの課題曲にもしばしば登場する。
ドヴォルザーク、と表記されることが多い作曲者名はドヴォ「ルジャ」ークが現地の発音に近いというが、現在は「ドヴォルザーク」が一般的である。「新世界」という呼び名がアメリカ大陸を指すことは周知の通りだが、当時のヨーロッパ人にとって、アメリカがいかに遠く遥かな国であったか、海を超えて未知の国へ行くことが、どんな冒険であったかを想像すると、この大きな交響曲のタイトルに「新世界」と明記した意味も想像できる。この交響曲は世界中で「第5番」としていたが研究が進んで資料が整理され、これが「第9番」となった。堂々たる名作というべきだろう。ニューヨークの音楽院に教師として招かれていたドヴォルジャークの望郷の思いが表現されているという説もある。
大阪交響楽団 ミュージック・アドバイザー 外山雄三
外山雄三写真 提供:大阪国際フェスティバル