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2018年度 名曲コンサート 曲目解説

 
 
第104回名曲コンサート   9月29日(土)
原田 慶太楼
大谷 康子

 
ドイツ・ヴァイオリン協奏曲の系譜
 
2018年9月29日(土)
昼の部 13時30分/夜の部 17時00分 開演
 

アントニオ・ヴィヴァルディ(1678-1741)
ヴァイオリン協奏曲 イ短調 RV356 作品3-6
(合奏協奏曲集 「調和の霊感」 作品3より第6番)

 アントニオ・ヴィヴァルディは、1703年に25歳で司祭になり「赤毛の司祭」と呼ばれるが、喘息のため司祭の仕事に支障をきたし、ヴァイオリン教師となる。ヴェネチアのピエタ養育院付属音楽学校でヴァイオリンを教えるだけでなく、ソナタや協奏曲を作曲し演奏指導した。作曲家としてのヴィヴァルディの名声を高めたのが、1711年(33歳)の12の合奏協奏曲集《調和の霊感》作品3であった。ソナタ集作品1と2が地元ヴェネチアで刊行されたのに対し、この曲集はアムステルダムのロジェ社から出版されて評判をとり、作曲者の名はヨーロッパ中に知られることになった。バッハもワイマール時代にこの曲集を手に入れ、そのうち6曲をチェンバロやオルガンの独奏曲や協奏曲に編曲している。この後ヴィヴァルディはオペラを作曲し各地で上演して、1725年には有名な《四季》を含む合奏協奏曲集作品8を出版し、名声の頂点を極めることになる。500曲以上の協奏曲、50以上のオペラ、膨大な宗教曲など、それらがほとんど注文生産だったことを考えると、ヴィヴァルディの生涯には莫大な収入があったはずで、おそらく音楽史上稀にみる大金持ちであったかもしれない。しかし彼は晩年ウィーンで過ごし、何故か貧困のうちに亡くなった。
《調和の霊感》は1つ、2つ、4つの独奏ヴァイオリンのための協奏曲で構成される。第6番は独奏ヴァイオリンの協奏曲で、曲集中最も知られ演奏頻度の高い傑作である。

 
第1楽章
アレグロ、イ短調、4/4拍子。リトルネロ形式。合奏のトゥッティと華やかな独奏が交互に現れる。
第2楽章
ラルゴ、ニ短調、4/4拍子。バスなしで独奏ヴァイオリンが内面的な歌を紡いでゆく。
第3楽章
プレスト、イ短調、2/4拍子。リトルネロ形式。躍動感溢れるフィナーレ。
 
作曲年代 1711年以前
初  演 不明。1711年、アムステルダム、エティエンヌ・ロジェ社出版
楽器編成 独奏ヴァイオリン、弦5部、チェンバロ
 
 
 
フェリックス・メンデルスゾーン(1809-1847)
ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64
 
 フェリックス・メンデルスゾーン=バルトルディは、ユダヤ人の裕福な家庭に育ち、英才教育を受けた神童であった。彼はあらゆる分野に秀でていて、美しい絵画も数多く残している(水彩画集あり。小柳玲子編集、岩崎美術社)。中でも音楽の才能は特別で、17歳で名作《真夏の夜の夢》序曲を書き、20歳でバッハ《マタイ受難曲》の復活上演を成功させた。そして26歳でライプチヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の指揮者に就任し、この楽団を世界一のオーケストラに鍛え上げた。ヴァイオリン協奏曲は、楽団のコンサートマスターのフェルディナント・ダーヴィットに約束したものだが、完成したのは6年後の1844年9月18日だった。翌年3月13日の初演は、作曲者が病気でフランクフルトにいたため、デンマーク人副指揮者ニルス・ゲーゼとダーヴィットの独奏で行われた。初演で演奏されたのは近年知られるようになった初稿で、出版の際に改訂され、現在の形となった。曲の冒頭の優美な旋律はあまりにも有名で、日本人に好まれるのは、都節音階の陰旋法に似た哀感があるからかもしれない。それだけでなく、全曲にわたって豊かで親しみ易い旋律に満ち溢れている。ロマン派屈指の傑作協奏曲である。楽章の切れ目なく作曲されているのは、メンデルスゾーンが当時一般的だった楽章間の拍手を嫌ったためといわれる。
 
第1楽章
ソナタ形式。2つの主題ともとても美しく、たっぷりとよく歌う。再現部の前に大きなカデンツァがある。
第2楽章
三部形式。主部の綿々と歌う主題と中間部の憂いを帯びた旋律が対比される。
第3楽章
ソナタ形式。元気に飛び跳ねる技巧的な第1主題に、展開部で導入される歌謡主題が絡まり、大きく高揚して終わる。
 
作曲年代 1838~44年
初  演
1845年3月13日、フェルディナント・ダーヴィットの独奏、ゲーゼ指揮ライプチヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団。
楽器編成  独奏ヴァイオリン、フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、ティンパニ、弦5部
 
 
 
マックス・ブルッフ(1838-1920)
ヴァイオリン協奏曲 第1番 ト短調 作品26
 
 マックス・ブルッフの作品はそれほど多く知られていない。作品目録を見ると3曲のオペラ、14曲の教会合唱作品、32の合唱曲(曲集)があげられている。生前は優れた合唱曲の作曲家として評価されていた。器楽曲は3曲の交響曲、ピアノ三重奏曲、ピアノ作品などもあるが、彼がもっとも得意としていたのは弦楽器の協奏的作品である。チェロ、ヴィオラを独奏とする曲は6曲あり、その中で《コル・ニドライ》は有名である。ヴァイオリンと管弦楽のための作品は10曲で、その中に有名な《スコットランド幻想曲》も含まれる。協奏曲は3曲あり、そのうち最も人気があり、ブルッフの代表作となっているのがこのヴァイオリン協奏曲第1番である。
 ブルッフは一流のオラトリオ歌手を母として、ドイツのケルンに生まれた。そこで音楽教育を受け、マンハイム、コブレンツ、ゾンダースハウゼンの指揮者を歴任する。その後イギリスのリヴァプールやプロイセンのブレスラウなどで活躍し、50代からはベルリンの音楽院の教授となり、後進の指導にあたった。彼は年とともに保守的になり、大衆の受けの良い作品を作ろうとしたようだ。また当時前衛の最先端をゆくリスト、ワーグナーらの新ドイツ派には理解を示さなかった。
 ヴァイオリン協奏曲第1番は、1866年コブレンツの若き音楽監督として活動し始めたころに作曲され、同じ年の4月24日にケルンのヴァイオリン奏者ケーニヒスロウと作曲者の指揮でコブレンツで初演された。その後ブルッフは作品に手を入れ、2年後名手ヨアヒムの手で再演され、大成功となる。ブルッフの名前は一躍有名となり、彼はこの曲をヨアヒムに献呈した。この協奏曲は、28歳のブルッフの青年らしいしなやかな感性が豊かな旋律と和声に浸透し、若き俊英の覇気がみなぎって見事な傑作となった。ロマン派を代表する名協奏曲である。

 
第1楽章
ト短調、自由なソナタ形式。「前奏曲」と題されているが、充実した冒頭楽章である。第1主題から華やかな技巧が展開される。第二主題はゆったりと歌う歌謡主題である。ピウ・レントの移行部はとても美しい。再現部は主題が展開され、展開風再現部と見ることも出来る。アタッカで次の楽章に続く。
第2楽章
変ホ長調、二部形式。甘美で瞑想的な旋律に満ち溢れている。アリアのように豊かなメロディが次々と現れるところは、ブルッフの面目躍如だ。後にはR.シュトラウスの薔薇の騎士やアルプス交響曲を思わせる旋律も現れる。
第3楽章
ト長調、ABABAのロンド形式。力強いロンド主題は、ブラームスのヴァイオリン協奏曲の主題に似ているとよく言われるが、ブルッフのほうが先である。挿入楽句は跳躍音を含む、やはり力強い歌である。ヴァイオリンの様々な技巧をちりばめて、最後はテンポを速めて見事に作品を締め括る。
 
曲年代 1866年
初  演 1866年4月24日、オットー・ケーニヒスロウ独奏、ブルッフ指揮、ドイツ・コブレンツで
楽器編成 独奏ヴァイオリン、フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、ティンパニ、弦5部
 
 
 
パブロ・デ・サラサーテ(1844-1908)
ツィゴイネルワイゼン 作品20
 
 パブロ・デ・サラサーテは、19世紀後半最大のヴィルトゥオーソ・ヴァイオリニストである。スペインのパンプローナ(サン・フェルミンの牛追い祭りで知られる)に生まれ、少年時代から神童として有名になり、17歳でパリ音楽院を一等賞で卒業した。その後の演奏活動でたちまち世界的名声を獲得した。21歳の時のサン=サーンスとの演奏旅行は語り草となった。生涯独身、紳士的な身のこなしで女性に大変モテたようだ。彼の演奏は作曲家からも賞賛され、ラロ《スペイン交響曲》、サン=サーンス《序奏とロンド・カプリチオーソ》、ヴァイオリン協奏曲第3番、ブルッフ《スコットランド幻想曲》、ヴィエニヤフスキのヴァイオリン協奏曲第2番などが献呈されている。
 作曲家としては、作品番号54まである作品は全てヴァイオリン曲であり、その中で最も有名なのが《ツィゴイネルワイゼン》である。題名は「ロマ(ジプシー)の調べ」という意味。1878年、34歳の作品で、ヴィルトゥオーソの最高度の技巧を駆使して、しかも情感豊かな旋律に満ち溢れた魅力的な傑作である。
 モデラート–レント、ハ短調、4/4拍子~ウン・ポコ・ピウ・レント、ハ短調、4/4拍子~アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェ、イ短調、2/4拍子。
 
作曲年代 1878年
初  演
不明
楽器編成  独奏ヴァイオリン、フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、ティンパニ、トライアングル、弦5部
 

     (C) 横原 千史(音楽評論家)(無断転載を禁ずる)

 

 

原田慶太楼写真(C)Hiroyuki Nagatake
大谷康子写真(C)Masashige Ogata

 

 

 

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