01469823
 

2021年度 名曲コンサート 曲目解説

 
 
第116回名曲コンサート 2021年5月29日(土)
太田 弦(正指揮者)
髙木 凜々子

 
古典の響き~ハイドン&ベートーヴェン~
 
 
2021年5月29日(土)☚開催延期となりました
昼の部 13時30分/夜の部 17時00分 開演

 

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)
ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品61
 
 短期ながらベートーヴェンが作曲を学んだハイドン。その師匠から直伝のユーモア・センスについて説かれたかどうかはいざ知らず、短気で知られたベートーヴェンは時にジョーク好きな一面も見せた作曲家だった。
 1806年、10歳年下の名ヴァイオリン奏者で親しい間柄にあったフランツ・クレメントの独奏による初演を想定し、11月下旬から1カ月余りで3楽章からなるヴァイオリン協奏曲を完成させたベートーヴェン。その完成は初演のわずか2日前のことだったという。面白いことに、ベートーヴェンは直筆の総譜に「クレメントのためにクレメンツァ(情け)をかけた協奏曲 〝Concerto par Clemenza pour Clement〟」というフランス語とイタリア語を混ぜた語呂遊びとアリタレーション(アルファベットの頭韻法)によるジョークを書き入れた。恐らくクレメントを苦笑させたであろう茶目っ気ある献辞。そして何よりこの協奏曲を特徴づける明朗な曲想との間には、得も言われぬベートーヴェンのヒューマニスティックな眼差しというものを感じずにはいられない。
 ベートーヴェンの中期、いわゆる〝傑作の森〟の所産でもあるこの協奏曲。ティンパニが主音(reの音)を5回ノックする第1楽章の幕開けからして、何と独創的でユニークなこと。この同音反復のモティーフによる有機的な楽曲構築や、充実したオーケストラ・パートの織地へ濃やかに刺繍を施してゆくようなヴァイオリン独奏など、意匠を凝らしたアイデアが満載。続く第2楽章では、打って変わって内省的かつ安らぎに満ちた変奏曲が展開する。その終結部のヴァイオリン独奏による技巧的カデンツァから切れ目なく入る終楽章は軽やかなロンド。正に輪舞風のロンド主題によるベートーヴェン流のブラヴーラ(華麗)なる終曲だ。
 ところで、当曲の1808年の出版譜はベートーヴェンの親友シュテファン・フォン・ブロイニングに(結婚祝いとして)献呈。さすがに、ジョークの言葉は抜きにして。
 
  作曲年代 1806年
  初  演 1806年12月23日、フランツ・クレメントのヴァイオリン独奏、ウィーンにて
  楽器編成
独奏ヴァイオリン、フルート、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、ティンパニ、弦5部
 
 

フランツ・ヨーゼフ・ハイドン(1732-1809)
交響曲 第104番 ニ長調 Hob. I : 104 「ロンドン」
 
 “蕉風俳諧の祖”たる花のお江戸の松尾芭蕉が、「おくのほそ道」スピード行脚の旅にいざ乗り出した100年後。〝交響曲の父〟たるハイドンが、還暦を目前にしてハプスブルグ家の帝都ウィーンから大商業都市であったロンドンへ向けて生涯初の長旅に出た。それは1791-92年、94-95年の2度にわたる音楽ツアーで、ヨハン・ペーター・ザロモン(ロンドンで活躍したヴァイオリン奏者・音楽興行主)の招聘による一大プロジェクトだった。
 1790年、30年来主従関係にあったエステルハージ家の名誉楽長職となり、ウィーンで年金生活を送る身となったハイドン。そんなフリーランスのハイドンに白羽の矢を立て、ザロモンは破格の報酬条件で編成の大きなオーケストラによるロンドンでの新作演奏などを打診、見事ハイドンのハートに火をつけた。かくしてハイドンのロンドン・ツアーは2度ともに大成功(合間の1792年夏に一旦ウィーンへ帰宅。その帰路のボンで22歳のベートーヴェンと会い弟子に迎えることになる)。名実ともにロンドンで人気絶頂を極めたハイドンは、2度のツアーでそれぞれ6曲ずつ計12曲の新作交響曲を披露した(今日「ロンドン(ザロモン)セット」などと呼ばれる)。そのセットのトリにしてハイドン生涯最後の交響曲となったのが、「ロンドン」の愛称を持つ全4楽章の交響曲第104番だ。
 ここに刻印されているのは、正に機微に通じた大家の筆致。第1楽章は、憂愁かつ劇的な序奏部と雨と曇りの街ロンドンにさっと日が差し込むような明るい主題との対比が印象的だ。のどかな曲想ながら小気味よくリズムが弾む第2楽章。続く第3楽章はメヌエットだが、その主題の弱拍のアクセントなど如何にも番狂わせで遊び心たっぷり。そして、バグパイプ(イングランドでも長い歴史をもつ)の特徴的な響きを模したかのような低音のドローン(reの持続音)に始まる民族舞曲調の溌溂とした終楽章。ハイドンが仕掛けたウィットに、当時のロンドンっ子たちの笑顔がふと思い重なる。
 
  作曲年代 1795年
  初  演
1795年5月4日(新説では4月13日)、ロンドンにて
  楽器編成
フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、ティンパニ、弦5部
 
 
(C)村田英也(音楽評論)(無断転載を禁じる)
 
太田弦写真:(C) ai ueda
髙木凜々子写真:(C) Naoya Yamaguchi
 
 
                                 
 
公益社団法人大阪交響楽団
Osaka Symphony Orchestra
〒590-0074
大阪府堺市堺区
北花田口町3-1-15 東洋ビル4F
TEL:072-226-5533
FAX:072-226-5544
 
201309301658395847.jpg
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
<<公益社団法人大阪交響楽団>> 〒590-0074 大阪府堺市堺区北花田口町3-1-15 東洋ビル4F TEL:072-226-5533 FAX:072-226-5544